なかでも、花火(煙火)の製造作業は、“火薬類取締法”の「製造作業に関する技術基準」及び「保安管理技術」に基づいてなされます。従って、これら作業の指揮・監督者になるには火薬類取締法に定める保安管理技術を習得する必要があります。すなわち、火薬類取締法に定める甲種・乙種又は丙種火薬類製造保安責任者免状を将来取得することが必要です。免状を取得しても、なお継続して関連知識の習得に努め、かつ実地の経験を積まなければ製造工場の製造保安責任者として選任されません。
上記の科目を大学等で履修していなくても、実際に煙火製造工場で作業に従事できれば、日常の作業の中で経験を積みながら、独学で上記科目を学習し製造保安責任者の試験に挑戦することもできます。
花火(煙火)の打揚に従事するためには、煙火打揚に関する保安教育を受けて、業界の自主保安制度である「煙火消費保安手帳」の交付を受けることが必要です。現在この手帳を所持している人達は、全国で約1万8千名(内、女性は約千名前後と推定)程度います。「煙火消費保安手帳」は、煙火打揚の補助作業(煙火玉・打揚筒等の運搬、煙火置場の設置、打揚筒の固定等初歩的な作業)から始めて順次高度な打揚技術内容へと経験を積むため、一定の技術を習得した後に、煙火協会の各地区組織が行う保安講習を受けた人達に対して交付されます。従って、花火会社に就職するか、花火会社に関係のある人達しかこの手帳の交付を受けることはできません。
花火会社(煙火事業所)の代表者はその多くが、代々世襲制を主とする小規模企業体であり、定期的に社員を採用する体制は殆どないといえます。大半の事業所では、縁故等を主とする不定期・少人数の採用ですが、打揚消費の最盛期である7月~8月には多数の臨時作業員がいます。花火師の中には、縁故等で臨時作業員として採用され、作業に習熟し、何年か継続して経験を重ねながら有能な技術者となった事例もありますが、一般的には就業の機会は少ないのが現状です。
がん具煙火(おもちゃ花火)の製造・販売業は近年の少子化の傾向や遊びの多様性から低迷化が進んでおり、打揚煙火の分野では横這い傾向が続いています。平成26年度の国内生産額 (単位:億円)は次の通りです。
国内生産 | 62.5 |
がん具煙火 | 10.5 |
打揚煙火 | 52.0 |
しかし近年、女性の花火師もラジオ・テレビ等マスコミをにぎわせており、注目の職業として、大学・高校在学中の学生や一般会社員からの転職希望等で協会事務局へ問い合わせの電話が多くあります。労働時間・休日・休暇、その他の労働環境等については、事業所により異なりますが、繁忙期には厳しい条件が要求されます。
江戸の両国川開きから280年余の歴史を誇る花火は文化としての重要性と大きな大会になると百万人以上の観客を動員するという経済波及効果には、将来のビジョンを描く明るいヒントが隠されているといえます。又、スポーツ大会やテーマパークのイベント等、エンタテイメントとしての花火の演出効果も見逃せません。 老若男女が楽しめる花火!
花火が好きな人・大勢の人を幸せな気分にする花火師は、社会的意義のある夢のある職業の一つですが、同時に”狭き門”ともいえるでしょう。